ツバメ記念日−その1


00年5月13日。

ツバメの夫婦が我が家にやってきた。


数日前から、玄関の壁に泥が目立ち始めたが、ついにこれがツバメの巣の基礎工事であることが判明。

ツバメの夫婦が入れ替わり立ち替わり、嘴に泥の固まりをくわえてきては巣に押しつけ、さらに唾でこれを丁寧に固めている。

その固まりも球形に近い。どこかで丸めてからくわえてきたのだろう。
そして唾がセメントのような役割を果たしているに違いない。

巣がこんな風に作られることを初めて知った。



人間のいるところと、さほど高さが違わないので、すぐ手の届く範囲での作業である。

玄関を開けると、びっくりしてツバメが逃げていったり、外から帰ってきて、玄関に入ろうとしてツバメと鉢合わせになったり、お互いにびっくりしながらの生活が始まった。



14日の日曜日は、天気が良かったので、一気にこの作業も進展。

ツバメ達は、必死に巣作りの作業を進めていった。

こちらは興味津々で、こっそりドアの陰からデジカメを突き出し、写真を撮ったりした。


結構ツバメも大胆である。

警戒はしているのだが、巣作りは意地でもやめそうもない。

カメラに気づいて一旦は逃げていったりするが、しばらくするといつの間にか巣に戻り、平然と作業を継続している。

それだけ巣作りの必要性が高いのだ。

つまり産まれてくる卵は、待ってくれないのだろう。


このまま、うまく巣作りが進み、卵を産んだり孵すのを見るのは、楽しみである。

驚かせたりしないようにしながらも、観察は毎日続いた。

玄関を出入りする度に、どきどきしながら巣の様子を伺う

いつ卵を産むんだろう。
いつ抱卵するんだろうか。
雄雌のどちらが抱卵するんだろうか。

卵はいつ頃、孵るんだろうか。

みんなで楽しみにしている。


しかし、問題は、どうしてツバメが我が家にやってきたのかである。

15年もここにいるが、こんなことは全くの初めての経験である。


そう思って考えれば、確かにこの場所は、雨にも風にも耐える、絶好の場所なのかもしれない。

外だから、簡単に入ることもできる。しかも屋根があり、玄関の囲いまであるので、至極快適である。


しかし、この団地には同じような家が何百とある。その中から我が家を選んでくれたのはなぜだろう。

我が家の人間達を観察して、この人達なら大丈夫と思ってくれたのだろうか。あるいは単なる偶然だったのか。


それでも、どこかしら、ツバメ達の親愛の情を感じてしまうのである。

ワクワクするような気持ちである。

次も見たい